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31回目の結婚記念日 その6 [Diary]

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エッセイ『新しい文化の中での新婚生活』(青年期)

そのときは初めてのことで自分もカレンもかなり緊張していました。
教会で挙式、レストランでの披露宴だったと記憶しています。教会での結婚式が無事に終わり、
写真撮影のときでした。
我々は媒酌人だったので、新郎新婦のそれぞれのサイドに着席させていただきました。
日本人の我々は小学校のときから記念撮影で、最前列の場合、男子は握り拳を作って、
それぞれのひざの上に置くよう習慣づけられています。
女子は手を重ねてひざの上。
自然にそうするものですが、女性も黒留袖の媒酌人だったら扇を右手から左手に渡すものです。
しかしながら洋装のカレン、ハンドバッグを持つわけでもなく、手には何もなかったわけです。
手持ち無沙汰になってしまいます。手をあわせてひざの上、足は少し斜めに揃えておくと写真には美しく写ります。。
しかし、カレンはそんなノウハウを知ることもなく、ただひたすら、誰かの真似をしなくっちゃ・・って、思ったんでしょうね。
最前列の女性は皆さん黒留袖、花嫁さんは勿論、ウエディングドレスですが、手にはブーケを持っています。
何も手に持っていない女性はカレンだけ・・・・。
そこで、カレンは新郎の横に座る旦那である自分を観察したんですね。
自分は握り拳をひざの上に堂々と置き、胸を張って、
黒のディナースーツの上着の後ろをちょっとだけお尻で踏んで襟にたるみが出たり、盛り上がらないように、
自分のことで精一杯…自分とカレンの間には新郎と新婦が着席しているわけですから、
カレンのことは少し見えにくい状態だったんです。
結婚式も終わり、新郎新婦が新婚旅行からも戻ったある日、
挙式の記念写真と新婚旅行のお土産を持って自宅に遊びに来てくれました。
そして、記念撮影を見てびっくり。
カレン、拳を握ってひざの上にデンと置き、足はまっすぐそろえて写っているではありませんか。
いろいろと周りを観察して出した結論は、自分と同じようにしておけば大丈夫って思ったんですよね。
おっとっと・・・・・。もうびっくりでしたが、そのカップルにも我々夫婦にも忘れられない素敵な思い出になりました。
それと同時にカレンがそれだけ真剣に日々の生活で周りを観察しながら、自分が恥ずかしい思いをしないように、
そして、福山の嫁として、また自分の奥さんとしての振る舞いに気を使ってくれていたんだなぁ・・・という証拠写真にもなったわけです。
こうしてカレンは毎日の生活の中で、
自分である以上に、福山の嫁であり、自分の奥さんであるという振る舞いに気を使わなくてはならなかったんですね。
そうして、何年も生活しているうちに、その振る舞いこそがカレン自身になってきたのでしょう。
アイデンティティーを大切にする西洋人の中で、つらい思い、そして、一番近しい自分にさえも言えないことって
いっぱいあったと思います。
それでも新婚生活から日々をすごしながら、カレン自身がこの国と文化に近づこうと必死に努力を続けた経験こそが、
今のカレンを支えて、そして、福山家、そして、自分の生活をスムーズにさせてくれているのです。
カレンの毎日の努力にひたすら感謝をし続ける自分です。
愛情があってこそできることなんですよね。
カレンにとっては、苦労しか思い出せない新婚生活だったのかもしれません。
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