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エッセイ『大学で出会った二人の先生』(青年期) [『ぶん★文★ぶん』]

名古屋音楽大学に入学して、★まっと★が師事した先生は助教授でした。この先生、お名前が東京用と名古屋用とお二つお持ちでしたが、いまだにその理由はわかりません。彼女から何を学んだかというのは、自分でもよくわかりません。レッスンのときにも何を注意されたかなどと言うことは、全く覚えていません。音楽的なことを注意されたことも一度もありません。大学でのレッスンをサボると自宅に電話がなって、母が困惑したと言うことだけしっかり覚えています。座学とは異なり、ピアノのレッスンは個人レッスンなので、代返などを頼むわけにも行かないですし、サボってもすぐにばれてしまうんです。先生にはあまり好かれている感じはありませんでしたね。また、とても成績が優秀な学生も担当してみえましたが、決して★まっと★に会った先生だとは思えませんでした。とにかくショックだったのは、犬を連れて大学にご出勤され、レッスン室で犬の世話をされるような先生でした。★まっと★は犬は嫌いではなかったので別にかまわなかったのですが、犬のほうに★まっと★の興味は走ってしまいましたね。ただ、与えられた楽曲をこなすようなレッスンだったのは事実です。
とにかく、この先生についていても音楽は心で演奏できるようになれないと確信した出来事がありました。とても暑い夏の日のレッスンで、当時の私立の音楽大学ですから、もうすでにレッスン室にはエアコンが入っていました。それはいいんですが、リモコンはなかったんですよね。
だから、高いところに取り付けてあるエアコンのスイッチを押さなくてはならなかったんです。
窓側にピアノがおいてあり、窓の上にエアコンが設置してあったんですが、、、この先生、ピアノの低音部にひざをかけてエアコンのスイッチを入れられたんです。この事件で、もうこの先生に師事すること自体が嫌で嫌で仕方なかったですね。
ピアノを足蹴にするような先生から何を学べるのでしょうか?
確かに★まっと★のピアノだって掃除は行き届いていないしピカピカとはいえないかもしれません。でも、ピアノの鍵盤にひざを立てるようなまねはできません。しかも女性だし・・・・。
この品位のなさが最大の原因で先生を信頼する気力さえ持ち得ませんでした。
結局、卒業するまでこの先生を信頼することは一度もありませんでした。すばらしいお弟子さんもお持ちでしたが、先生の力はいかほどのものだったんでしょう?お弟子さんの向上心の賜物なんでしょうね。でも、唯一学んだことは、このような先生でも大学と言う音楽教育の現場で先生ができると言う日本の環境を知ったことです。このころから★まっと★の目が海外に向き始めました。音楽を愛するために必要な心の持ち方。それが学びたかった。
大学で自分が師事している先生への信頼感がない中、★まっと★は自分が信頼できる先生との出会いを求めていました。大学内でも良いし、別に学外の先生でも良かったのです。
そして、そんな中、大学内ですばらしい先生との出会いがありました。
世界的に有名なマンドリン奏者・榊原喜三先生の奥様で榊原きよみ先生。きよみ先生は当時、名古屋音楽大学で副手をしてみえて、伴奏や副科のレッスンをみていらっしゃいました。接点は殆どなかったのですが、あまりにも魅力的な女性の先生だったので学食で★まっと★のほうからお声をかけさせていただきました。まだ、30代になったばかりの美しくて、やさしい女性の先生でした。この先生との出会いが★まっと★のそれから人生に大きな影響をもたらしたのです。きよみ先生に出会うことがなかったら、★まっと★は演奏家の道を歩むことはなかったでしょう。
喜三先生ときよみ先生のステージで譜めくりの大役を仰せつかって、同じ舞台に立たせていただいたことがあります。そのことがきっかけで、今、★まっと★はステージに立っているのです。ご夫婦の奏でるすばらしい音の遊戯に包まれ、ステージ、そして客席が暖かい空気で満たされます。その中心に先生たちとご一緒できたこと、これが★まっと★にとって、ステージのすばらしさを身にしみて感じた最初の出来事です。そして、自分もステージを一緒に勤められる音楽家のパートナーがほしいと思うようになったのです。
きよみ先生は心臓病を患ってみえて、★まっと★が大学四年生のときに若くして他界されました。しかし、きよみ先生との出会いがなかったら、今の★まっと★は絶対に存在しないのです。そして、★まっと★の卒業前、デビューリサイタルに来てくださることも無く他界されてしまいました。師匠として、女性として本当にすばらしい方でした。レッスン料も一度もとられたことがありません。そして、本当にたくさんの音楽を教えてくださいました。感謝しています。一緒に遊びにも付き合ってくださいました。亡くなられたときには自分のところに連絡が入り、大学に知らせたのも★まっと★でした。そして、お葬式には参列する勇気がありませんでした。勇気がなかったというよりも、きよみ先生が亡くなった事実を信じることができなかったのだと思います。黒のスーツを着て、家を出たものの、一晩中お酒を飲んでいたように記憶しています。悲しかったです。でも、きよみ先生のおかげで留学にも踏み切れたし、海外での勉強を有意義にこなすことができたと思っています。
ヨーロッパでのデビューが決まったある日、母が言ってくれました。『私たちはあんたのヨーロッパデビューリサイタルに出かけることができないけど、きよみ先生は世界のどこであんたがピアノを弾いていても聴いてくださることができるから、いいわねぇ。』
この言葉には本当にありがたいと思いました。★まっと★がいつどこのステージに立っていても、その同じ空間にきよみ先生が来てくださっていると、今でも信じてステージに立っている★まっと★です。
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ねこじたん

いい出会いも嫌な出会いも全てプラスですよね!
ただ、影響の大きかった人や自分を作ってくれた人って ありがたくてしょうがないですね〜
by ねこじたん (2009-04-08 01:35) 

菊地一也

きよみ先生は、まっとさまにとって
すごく大切な人だったんですね
文章から伝わってきます
きっと思いは通じるから
いつも見守ってくれていることでしょう

by 菊地一也 (2009-04-08 04:00) 

chibiroh

一気に読ませていただきました。
わたしがBLOGを通じてまっとさんの演奏を
聴かせていただけるのも
まっとさんときよみ先生との出会いがあったからなのですね。

by chibiroh (2009-04-08 05:49) 

いわもっち

おはようございます。
いろんな方がいらっしゃいますよね。。
by いわもっち (2009-04-08 06:07) 

★まっと★

ねこじたんちゃま(●⌒∇⌒●)
本当に数多い出会いに感謝しています。
現在の自分を振り返ると、本当に多くの皆さんの影響を受けたことがよくわかります。
そして、やはり・・感謝です。

菊地先生(●⌒∇⌒●)
きよみ先生の夫婦でのステージ・・・これが自分の今のステージの基本になっていると思っています。

chibirohさん(●⌒∇⌒●)
そうですねぇ・・きよみ先生に出会うことがなかったら板にたつこともめったにはなかったでしょう。
素晴らしい師匠でした。

いわもっちさん(●⌒∇⌒●)
そうですね。本当にいろいろな方がいらっしゃいます。しかしながら師弟の関係が成立するように自分もこれからも磨いていかなくっちゃねぇ。
o(*'▽'*)/☆゚'・:*☆
by ★まっと★ (2009-04-08 06:22) 

A・ラファエル

どんな人と出会い、どのように関わるかで
その後の人生が変わるのですよね。
一期一会
大切にして生きたいですね。
by A・ラファエル (2009-04-08 06:30) 

ちゃーちゃん

何でもそうだと思いますが、人生の中で信頼出来る人、この人に付いて行きたい思える人が居たという事が素敵な事ですね。
★まっと★さんは反面教師の体験もしていらして
それが今の★まっと★さんの人と成りを形成しているのでは・・・と思います。
生意気な事を言ってm(_ _)mです・・・
by ちゃーちゃん (2009-04-08 08:21) 

★まっと★

A・ラファエルさん(●⌒∇⌒●)
本当に人生って自分では気が付かないうちに多くの人との出会いによって方向も少しずつ変化したりしますよね。一期一会・・・本当に大切にしていきたいと思います。

ちゃーちゃん(●⌒∇⌒●)
いえいえ、本当にそうだと思います。自分の師匠を尊敬できること・・
こんなにもありがたいことってないですものね。
そして、自分もいつかそうなっていきたいと思っています。
少しずつですが、がんばらなくては・・・・。
全然、生意気だなって思っていません。
お言葉ありがたいです。
by ★まっと★ (2009-04-08 09:06) 

KOZOU

いろんな先生ですね。
確かにピアノの鍵盤に足を(^_^;)
★まっと★さんの気持ちわかります。

きよみ先生、ほんとにいい先生のようですね。
若くしてお亡くなりになり、本当に惜しいですね。
by KOZOU (2009-04-08 20:58) 

★まっと★

KOZOUさん(●⌒∇⌒●)
普通にお弟子さんの前で鍵盤に足を・・
と考えると、普通の生活の中でのさま座マン赤穂動画なんとなく目に見えるように思ってしまいますね。
きよみ先生が自分に与えた影響は非常に大きいと思います。

by ★まっと★ (2009-04-09 05:41) 

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